アポロ11号 月面の記念写真が不自然といわれる部分を検証
月面写真に関するQ&Aまとめ
Q1: 月面で撮影された宇宙飛行士の影が漆黒に見えるのはなぜですか?
A1:
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月面は平均アルベド12%と低く、反射光は弱い
-
影の中は直射光ゼロで、二次反射も限定的
-
宇宙服は反射率70〜85%で、影側でも間接光を受ける
-
カメラの露出は直射部分に合わせているため、地面の影は黒潰れする
→ 影が黒く見えるのは物理的に自然です
Q2: 宇宙服の反射率はどのくらいですか?
A2:
-
外層(ベータクロス+テフロンコーティング)の可視光反射率:約70〜85%
-
赤外線反射率はさらに高く、太陽光による過熱を防ぐ
-
この高反射率により、影側でも月面からの間接光が効率的に反射され、見た目が明るくなる
Q3: 影の明るさはどのくらい差がありますか?
A3:
概算ルクス(照度):
直射宇宙服 120,000 lux 適正露出
宇宙服影側 5,000 lux 十分明るく写る
地面の影 500–800 lux 黒潰れする
→ フィルムの階調(6EV)で直射〜影側の階調は収まり、地面影は黒潰れする

Q4: 月面写真で星が写っていない
A4:
-
カメラ露出は明るい月面・宇宙飛行士に合わせて短時間(f/11、1/250秒) 月面は太陽光が強烈なため、低感度かつ高速シャッターで撮影しないと白飛びする
-
星は非常に暗いため、この露出では写らない
-
星を撮るには長時間露出が必要だが、月面は白飛びするため両方同時撮影は不可能
Q5: 初期の月面写真の露出設定は?
A5:
-
絞り f/11
-
シャッタースピード 1/250秒
-
ISO 160(Ektachrome SO-368リバーサルフィルム)
-
NASAの公式「Astronaut’s Photography Manual」に記載されており、太陽光下の月面撮影用に訓練された値
参考URL
📘 NASA 公式 — Astronaut’s Photography Manual(撮影マニュアル)
NASA とハッセルブラッドが共同で作成した 宇宙飛行士用撮影マニュアル(Astronaut’s Photography Manual) があります。この中にはロケーションや太陽角に応じた適正露出設定の表や説明があり、月面撮影の露出理論が載っています。
→ 🔗 NASA Astronaut’s Photography Manual — Exposure チャート含む(PDF)
https://cdn.hasselblad.com/de1723ad-7672-46d0-9751-d66c028078cc_nasa_astronauts_photography_manual_by_hasselblad.pdf
Q6: 影がわずかに扇状に広がっているのは太陽以外の光源のせいですか?
A6:
-
影が放射状に見えるのは 透視投影効果(近い影と遠い影で見え方が違う)
-
月面の微傾斜や遠近法によるもので、複数光源の証拠ではない
Q7: ヘルメットのバイザーに映る影と地面の影の消失点が一致しないのはなぜですか?
A7:
-
ヘルメットのバイザーは 球面鏡
-
球面反射では平行線の消失点は保持されない
-
影を延長しても地面の消失点と一致しないのは自然であり、複数光源の証拠ではない
Q8: 足跡と靴底のパターンが一致しないのはなぜですか?

A8:
-
足跡を作るのは 月面用オーバーシューズ(外靴)
-
写真で靴底が写っているのは 内部ブーツ

深掘り
宇宙飛行士の影が漆黒なのに宇宙服は明るいのは不思議
月面(レゴリス: 細かな砂や塵の層)の平均反射率は約0.12(12%)です。
これは
-
アスファルトに近い
-
白い砂浜よりかなり暗い
それでも宇宙飛行士の前面が明るい理由
太陽光は地球上より強い(大気減衰なし)。
月面は
-
完全な拡散反射体に近い(ランバート反射)
-
全方向に光をばらまく
そのため、
-
宇宙飛行士の前面には
-
月面からの反射光
-
宇宙服自体の高反射率
が当たる
-
結果として「真っ暗にはならない」
■ アポロ宇宙服(A7L)の反射特性
-
外層素材:ベータクロス(ガラス繊維+テフロンコーティング)
-
可視光反射率:約0.7〜0.85(70〜85%)
-
赤外反射率:さらに高い(熱対策のため)
これは:
-
月面レゴリス(約12%)
より はるかに高い反射率 です。
月面が暗い(約12%)のに対し、
宇宙服はほぼ白色拡散体に近い。
つまり
-
月面からの反射光(弱い)
-
それを高反射率の宇宙服がさらに反射
宇宙服の影側は
-
太陽直射は当たらない
-
しかし周囲の明るい月面全体が巨大な光源になる
特に重要なのは:
● 月面はランバート拡散体に近い(ランバート拡散体とは「どの方向から見ても輝度(明るさ)が一定に見える理想的な拡散反射面」のことです。)
太陽が当たった地面は
全方向に光を放射します。
宇宙飛行士はその上に立っているため、
-
下から
-
横から
-
斜めから
広い立体角で反射光を受け取る。
地面の影部分と違い、宇宙服は「明るい地面に囲まれている」
宇宙服は 70〜85% 反射。
仮に:
-
月面が 12% 反射
-
宇宙服が 80% 反射
だとすると、
「地面→宇宙服」の段階でも
かなり効率よく明るくなる。
カメラは白い宇宙服に露出を合わせています。
すると:
-
宇宙服の影側 → 階調が残る
-
地面の影 → ほぼ黒く潰れる
これはダイナミックレンジの問題です。
単純化したモデルで概算
前提条件
① 太陽光(大気なし)
地球軌道での太陽定数
→ 約 1360 W/m²
可視域の照度に換算すると
→ 約 120,000 ルクス
(月面もほぼ同じ)
② 月面の反射率(アルベド)
平均:約 0.12
③ 宇宙服の反射率
約 0.8
① 直射日光が当たる宇宙服
直射照度:
Esun≈120,000 luxE_{sun} ≈ 120,000 \text{ lux}Esun≈120,000 lux
これはそのまま当たる。
→ 約 120,000 ルクス
② 太陽に照らされた月面の明るさ
月面は 12% 反射するので、
Eground≈120,000×0.12E_{ground} ≈ 120,000 × 0.12Eground≈120,000×0.12≈14,400 lux≈ 14,400 \text{ lux}≈14,400 lux
これが月面の明るさ。
③ 宇宙服の「影側」が受ける間接光
宇宙服は地面に囲まれているので、
反射光の一部を受ける。
完全には受けないので、
立体角をざっくり 1/3〜1/2 と仮定。
Eindirect≈14,400×0.4E_{indirect} ≈ 14,400 × 0.4Eindirect≈14,400×0.4≈5,000 lux≈ 5,000 \text{ lux}≈5,000 lux
④ 地面の「影の中」
影の中の地面は:
-
直射ゼロ
-
周囲も影が多い
-
上は黒い空
遠くの明るい地面からの二次反射のみ。
二次反射はさらに 12% 減衰:
14,400×0.12≈1,70014,400 × 0.12 ≈ 1,70014,400×0.12≈1,700
さらに幾何減衰を考えて半分程度:
≈500〜800 lux≈ 500〜800 \text{ lux}≈500〜800 lux
■ 結果まとめ
状態照度(概算)
直射宇宙服 120,000 lux
宇宙服の影側 約 5,000 lux
地面の影約 500〜800 lux
■ ルクス差
-
直射 vs 影側:
約 25倍 -
影側 vs 地面の影:
約 6〜10倍 -
直射 vs 地面影:
約 150〜200倍
人間の視覚やフィルムでは
-
100倍差があると
→ 暗部はほぼ黒に見える
つまり
宇宙服の影側は「かなり明るい」
地面の影は「ほぼ黒く潰れる」
となります。
アポロで使われたカメラとフィルムの性能を使って検証します。
カメラ
Hasselblad 500EL
(NASA改造型)
フィルム
Kodak Ektachrome SO-368
(アポロ11号などで使用されたカラーリバーサルフィルム)
① フィルムのダイナミックレンジ
Ektachrome(当時のリバーサルフィルム)の実効ダイナミックレンジ:
約5〜6段(EV)
1段(1EV)=明るさ2倍
なので:
26=64倍2^6 = 64倍26=64倍
つまり、
明暗差が約 60倍 を超えると
暗部か明部が飽和・黒潰れする。
② 前回の概算照度をEVに変換
前回の値:
-
直射宇宙服:120,000 lux
-
宇宙服影側:5,000 lux
-
地面影:500〜800 lux
直射 vs 宇宙服影側
120,000÷5,000=24120,000 ÷ 5,000 = 24120,000÷5,000=24log2(24)≈4.6EVlog₂(24) ≈ 4.6 EVlog2(24)≈4.6EV
→ フィルム内に収まる(ギリギリ)
直射 vs 地面影
120,000÷600≈200120,000 ÷ 600 ≈ 200120,000÷600≈200log2(200)≈7.6EVlog₂(200) ≈ 7.6 EVlog2(200)≈7.6EV
→ フィルムの6EVを超える
地面の影は黒潰れする
以上です。
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